ビデオデッキ、本音のインプレ

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大阪日本橋に行きまして、HV-BS890の実物を見てきました。さらに、販売店のご好意でBS890の試し録画もさせてもらいました。S-VHSモードのみで、テープはVictorXG120、テープシュミレーションは切りです。

テープの録画状態の検証は、絵についてはHR-S7000を使用。モニタは三菱20W-TS1の画像モード「シネマ」をイコライジングして使っています。コントラストは最小に設定して照明は40W白熱電球の間接照明だけの状態で見ています。 この機種には強力なNRは全くないため、テープに記録された情報のS/N判定に適しています。Hi-Fi音声に関してはWV-D700の右側の機能で再生して検証しました。HR-S7000ではHi-Fi音声のトラッキングが合わず、周期的にノイズが入ってしまったためです。

音声は各ビデオのライン出力をプリメインアンプAuraVA-40に入力し、ヘッドホン端子にソニーMDR-E888LPを接続して聴いています。ボリュームは10-11時(試聴に耐える限界音量)まで上げ、残留ノイズを聴き逃さないようにしています。ちなみに、この状態ではSAT-100GRXのダイレクト出力からD700に録画したテープでも、残留ノイズが聞こえます。そのくらいシビアな条件です。

結果

画質:HV-V920MNによる録画と比べ、やや輝度高域のチリチリしたノイズが多いかな?という程度で、ほとんど差は感じられませんでした。輪郭の右側に白ふちがつくシーンもありましたが、衛星放送のワールドニュースでは送りが悪いのでビデオだけ責めてはいけないと思います。色は黄色よりな気がしますが、これはモニタ・再生ビデオで変わるので何とも言えません。NHK総合のニュースでは人物の左端が黄色、右端が赤によっていましたが、D700の右側で再生するとほとんど気にならなくなるので、再生側の問題だと思われます。

記録自体は3倍でも特に問題があるようには見えません。ただし、試しにモニタを店頭モード(ハイブライト・コントラスト最大)に設定すると見た目のS/N感は一挙に悪化しますので、意見が分かれるのはある意味当然かも。 3DY/CはTVHフィルターよりも癖が少なくてむしろ良い感じでした。色つきテロップのスクロールでも巨大ドット妨害が出ません。薄暗い絵を見ないと即断は出来ませんが、この自然さは貴重です。

音質:端的に申し上げまして、録音能力はV920MNと同程度はあります。ただし、3倍ではナレーションのサ行がややきつくなります。私にとって最大の問題である音声ですが、一言、「V920MNを超えています。」 まず、地上波録画(GCR入り)部分の検証ですが、毎日テレビでは無音部分で「キューキュルキュル」というノイズが入ります。しかし、NHK総合のニュースではそのようなノイズは入っていません。音量を限界まで上げてもスタジオの空調音と、響きしか聞こえません。NHK総合のニュースでは、疑いたくなるほど音声S/Nが良いです。

BS放送の音声ですが、これもV920比、圧倒的に残留ノイズが少ないです。BSニュース50が終わり、ワールドニュース(ABC)に切り替わる瞬間をなんども聴きましたが、一瞬ノイズが完全に消えて、画面と同時に切り替わっています。ビデオでの混入ノイズはないと考えるしかありません。山梨県特集でワインを試飲するシーンがありましたが、ナレーションが入る間だけ極微量「ジジジジ」と聞こえるのであれっと思うと、ナレーションが終わると同時に、このノイズは消えてしまいます。番組製作段階で混入したとしか思えません。 結果、HV-BS890は録画系に関する限り、HV-V920MNと同等、音声では上回っているという結果が出ました。再生系の評価は一切行っていない(このビデオ単体での性能評価ではない)ことは最後に念を押しておきます。

再生性能は店頭で見ましたが、テレビのコントラスト最大では判断しようがないので参考程度にお考えください。まず、V920MN3倍録画テープにおいて、赤一色の画面での色相変動がなくなっており、色が縞模様にならずにすっきり見えたのには驚きました。ついに松下の領域に近づいたか?ノイズは輪郭と影の部分に集中しているように見えました。 地上波チューナーは店頭でHR-VXG200と同時比較しましたが、赤系の色はかなり違って見えました。(テレビは同型・同一設定)ビクターはすこしダイダイ色により、独特の艶が出ます、三菱は地味で、沈んだ紅といった感じでした。 しかし、BS890では広帯域化とGCRの相乗効果で地上波がまるで衛星放送みたいに見えます。背景まっ黒のシーンでゴーストの痕跡が出ているのでかろうじて衛星ではないと分かります。

更なる検証のために、予約録画をEV-BS3000でしかけてきました。BS3000はPCM音声を積んでいますので、少なくとも残留ノイズが録音・再生で増えないことは過去に検証済みです。 17:50-18:03までBS7、18:04-18:15までNHK総合を録画します。

疑問点1

>NHK総合のニュースでは、疑いたくなるほど音声S/Nが良いです。

EV-BS3000の内蔵地上波チューナーの音声はバズノイズが目立ちます。世界遺産録画など、非常に耳ざわりなレベルです。このチューナーでNHK総合のニュースを録画した場合、バズノイズの量が減るのであれば、BS890録画の検査結果と整合性が合います。 疑問点2

>BSニュース50が終わり、ワールドニュース(ABC)に切り替わる瞬間をなんども聴きましたが、一瞬ノイ ズが完全に消えて、画面と同時に切り替わっています。

音声残留ノイズが聞き取れる限界以下である事が明らかとなっているSAT-100GRXから、BS3000に録画しノイズの振る舞いをBS890録画と比較します。

この追試により、BS890のチューナーおよび録画系の音声部が良いとの確証を得たいと考えています。

HV-BS890入手しましたので、各部を評価してみました。

よいところ
GCR機能つき内蔵地上波チューナー:色、輝度信号ともに情報量がきわめて多い。本当に、地上波が衛星放送に見える。カメラを引いた場面でも立体感が維持される。チューナーEEではシュートもない。GCRを働かせてもS/Nがほとんどの場合まったく落ちないことも特筆に値する。GCRオンでゴーストが削減されるだけではなく、黒が締まり、輪郭のぎらつき(左ゴースト?)が収まる。GCT-3000でまれに見られるような、GCRオンにした際に輪郭部にリンギングが何重にも重なって出る現象もみられない。
ちなみに音声レンジはかなり広い(高音も低音もきちんと出ている)が、ステレオ放送では残留ノイズがかなり大きい。「ザー」というノイズが主で、ときどき「キュルキュル」と変動する場合がある。ただし、このノイズは音そのものには絡まない。
電波が弱い局の場合、薄暗い部分に色のついたランダムノイズが出るケースもあったが、受信レベルが十分な局ではそのような事はなかった。


3DY/C:一見、地味な効き方ではあるが、副差用がほとんど見られない点で良くできている。地味というのは、スタジオセットをロングで捉えたシーン等で、極細部にちらつきが出ており、完全にぴったりと止まって見えないことである。しかし、ためしに切ってみると斜めの網目にクロスカラーが現れるので、確かに働いている。瓦の斜め線をスクロールしつつ映したシーンでは、TVHフィルターよりクロスカラーの量が若干多い。反面、濃い色の被写体が動いてもドット妨害は最初の一瞬しか出ないため、アルゴリズムが外れるとドット妨害が出っぱなしになるTVHフィルターよりも総合的には有利な感がある。

FF-APC:V920MNと比べて、色再現性が飛躍的に改善されている。具体的には、濃い色でも色ムラ皆無、色輪郭がざらつく現象も少なくなっている。色ムラに関してはWOWOWカラーバーをSP/EP、S、ノーマルVHSで録画したテープを再生して比べたが、どのモードでも色の均一性は見事であった。

音声混入ノイズ:事前の比較の通り、V920MNにみられる音声部への混入ノイズはBS890には存在しない。


問題点
ビデオ再生能力:SP/EPとも常時白い横びきノイズが出ており、少しでも画面が暗くなると透明感がなくなる。このノイズには3DNRも今一つ効果が薄い、SPよりもEPでさらに目立つようになる。また、輪郭の右側のみにシュートがつく。この輪郭補正は再生時に付加しているようである。「新高画質セレクト」の「ワイド」に設定するとさらにシュートがきつくなる。「ダビング」では高域が持ち上げられるが、細部情報よりノイズが増えるので、ダビングに必ずしも有効であるとは限らない。「標準」は情報量とノイズのバランスが一番とれている。「NR」は高域がはっきり落ちて甘くなる、が3倍モード再生ではこのモードが無難である。ほかの画質セレクトでは情報量はあるものの、3倍モードでは面と細部にノイズが多発し見苦しい。他機録画3倍モードテープではテロップに反転ノイズが出ることもあった。

629TBC:オンにすると画面全体が極わずか左に移動する。HV-BS89で問題であった色が黄色くなる症状は全くない。標準モードの再生ではメリットのほうが上であるが、3倍モードでは今一つの感がある。テープにより変わるので即断できないが、揺れを今一つ抑えきれない場合があった。また、標準・3倍とも、まれに画面が上下方向に震える場合があった。停止して再度再生すると直ることが多い。

ビデオ録画能力:メカのジッター量が920MNより増えている。録画能力には再生時のようにノイズ面での不安はないが、再生機のメカが弱い場合には揺れが目立つ場合がある。

BSチューナー:V920MNと比べると、やや劣る。具体的には、ややコントラスト(とくに黒側の締まり)が弱い点と、被写体右側に出る輪郭強調線(シュート)が気になる。なお、これでもソニーの1世代前(WV-D9000等)の内蔵BSチューナーよりはかなり上である。

総評
外づけチューナーとしては、HV-V920MNよりもお勧め。地上波チューナーの音声部とBSチューナーで若干劣るが、それ以外のチューナーとY/Cで上位に立つ。

ビデオとしては、どちらをとるかは微妙な線。EP重視なら、状態が良いという条件付きではあるがV920MNの方がまし。EPで情報量とS/Nが両立している点でV920MNの方がよい。EP重視なら、ビクターや松下を選ぶのが最善ではある。SPでは、チューナー部音質と色再現性ではBS890が、基本的なS/Nと輪郭の自然さでは920MNが優位である。

DVなどのデジタルビデオへのアップコンバート用途としては、状態が良いという条件付きではあるがV920MNの方がお勧め。最大の弱点である時間軸変動が除去され、薄かった色もバーストつけ換えで本来の情報量が味わえる。逆に、BS890再生では色均一性ではV920MNより優位であるが、横びきノイズが記録されてしまうので望ましくない。

少しだけ、補足を。

>他機録画3倍モードテープではテロップに反転ノイズが
これは、S-VHSモードでEP録画されたテープです。

BSチューナー音質:SAT-100GRXと比べれば落ちるが、ビデオ内蔵チューナーとしては良好です。920MNのように、残留ノイズが出ている事はありません。

>地上波チューナーの音声部とBSチューナーで若干劣るが、それ以外のチューナーとY/Cで上位に立つ。

地上波チューナーの音声ノイズの量とBSチューナーの画質で若干劣りますが、地上波チューナー画質とBSチューナー音質、3DY/CではBS890がV920MNより良いです。

操作性面では、本体での「お急ぎ予約」が特殊なことに注意が必要です。テープが入っていなくてもGコード予約・メニュー予約はできますし、実行もされますが、「お急ぎ予約」ではそのような融通が利きません。


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