ビデオデッキ、本音のインプレ

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一部のマニアには最も興味のある、DVとW-VHS(SD)の比較をしてみました。DHR-1000で録画されたテープを1世代デジタルコピーしたものを、某所から比較の為に入手し、それを手持ちのWV-D9000で再生しました。以前に一度HR-W5とDCR-VX1000で比較した事がありますが、今度はDVデッキ同士での比較です。「ビデオカメラだからDV側が不利」と言われないように…

使用した機材:

TV :SONY KW-32HDF9(画質設定:AVプロ VM:切 DRC:弱)
VTR:DV(録画)SONY DHR-1000(音声16ビットモード)内蔵チューナーと 外部チューナーとしてNV-SB800Wを使用したのがそれぞれ1話ずつ

(再生)SONY WV-D9000

W-VHS Victor HR-W5(SDモード,画質:スタンダード YNR,CNR:+-0)内蔵チューナー使用 AVセレクターなしでテレビに直結

アンプ:SANSUI AU-α607NRA

ヘッドホン:ゼンハイザー HD600、ソニーMDR-CD900ST 見かけ上の映像S/Nを稼ぐ為、夜中に照明を消して真っ暗な中で視聴 音声はアンプ経由のヘッドホンでモニター

使用したテープ
「カードキャプターさくら」3〜4話(右上のBSロゴがないので、比較には最適)

画質比較

今回はテレビに直結して調べています。前回とは条件が違うので、結果が異なっている部分がかなりあります。テレビの入力1と入力2に接続していますが、画質の調整はEEスルーのGCT-3000で合わせてあります。WV-D9000とHR-W5の直接対決、最も気になるのは色再現でした。D9000とW5では色相がずれているようです。元のセルを見ない限りどちらが正しいとは断定出来ないのですが、W5では黄色がくすんでいる感じがしました。(例:ケルベロスの色)逆に青の深みはW5の方が優れている感じです。パッと見には、D9000は明るい色が得意、W5では暗い色が得意に見えます。D9000のDV出力は全体に白っぽく、黒が浮いています。これはD9000からDVの再生画像を出力する段階の問題で、DV側とVHS側でスルーのEE比較をした時でも差があり、DV側はEEスルーでも白が飛ぶ傾向にあります。VHS側はそれほどでもないのですが…。D9000は鮮明で濃厚な色で、絵の具をふんだんに乗せた感じ、W5の方は全体に色乗りが薄く、絵の具の量を控えめにした感じです。また、生身の人間の肌の色ですが、解説お姉さんの肌の色はD9000ではいわゆる絵の具の「肌色」で赤っぽく、W5の方がより「日本人的な」黄色人種の肌色が出ていると思いますが、これを「くすんでいる」と言って嫌う人がいるかも知れません。

恐らくSONYとVictorの絵作りの違いでしょう。また、色のはみ出しについてですが、これは内蔵チューナー使用ではW5では右側に、D9000では左側にはみ出しがありますが、問題になる程のはみ出しはありません。ただしDVの記録に外部チューナーを使用した場合は左側に多く色がはみ出していて、左右の違いこそあるものの色のはみ出しがあるのはどちらも同じでした。DVだから色のはみ出しが存在しないと思っていたのに意外な結果でした。色以外に、輝度系ではどちらもほぼ互角の再現性で、W-VHS(SD)の弱点と言われている暗い部分のS/N(例:オープニングの冒頭)でも画質設定がスタンダードである限り、NRが強めに効いているのでそう気にするほどの事ではありませんでした。特にSD YNRをONにすると、暗い部分でもDVとほぼ互角のS/Nが得られます。D9000のDV側では全体に画面が白っぽく浮く傾向にあり、オープニングの冒頭ではバックが黒というより灰色になりますので、黒の沈み具合はむしろW5の方が良好です。WV-D9000には大きな欠点があります。画質の調整が出来ない事です。D9000の方がEEスルーでもシャープネスが立った状態なのですが、これを再生時に補正する事が出来ません。結果として、輪郭の強調感が強くやや不自然な再現になる事がありました。むしろW5の方が化粧が控えめの玄人好みの絵で、好感が持てました。

音質比較

ヘッドホン(HD600,CD900ST)で大きめの音量でかなりシビアにモニター試聴してみましたが、DVとW-VHS(SD)間では静かな部分での微小音の再現や、映像側からのカブリの有無でわずかに違いがあったものの、DHR-1000の音声16ビットダイレクトディジタル記録に優るとも劣らない良好な音質をW-VHS(SD)は再現しました。むしろDVで外部チューナーを使った場合にはアナログ接続なのでノイズが乗ってしまいますが、W-VHS(SD)の音質はこれを上回るもので、ノイズ量はアナログ音声記録のDVよりも少ないです。つまりDVで下手に外部チューナーを使うより、W5内蔵BSチューナーの方が高音質という事です。逆にDHR-1000内蔵チューナーでのディジタル記録の場合では、微小音の再現では限りなく無音に近づくDVと、わずかにノイズ感の残るW-VHS(SD)、それにW-VHS(SD)では映像側からのカブリが混入してシーンによってはごくわずかにノイズが乗る事がありましたので、W5と言えどもDHR-1000のディジタル記録には勝てません。しかし、VHS Hi-Fiの宿命でもあるスイッチングノイズは、皆無とは言わないまでもきわめて低いレベルに抑えられていて、かなり注意しない限り聴く事は出来ません。W-VHS(SD)の音質はDVと比較出来る程に品位の高いもので、VHS Hi-Fiのレベルを完全に超越しています。

総合評価

DVとしてD9000、W-VHS(SD)としてW5を使ったのですが、マニアには非常に興味のある対決でしたが、結論としてはやはりディジタル記録であるDVにわずかに分があるものの、W-VHS(SD)もなかなか捨てたものではない、という事になりました。特にD9000の再生性能の限界として、細かな画質調整が出来ないのはかなり問題で、むしろW5の方が玄人好みの輪郭強調の少ない絵が出ます。テレビ側で補正してやれば良いという事にもなりますが…。色の再現性ではD9000とW5でかなりの違いが出ますが、好みの問題もあるでしょう。また、DVでも色のはみ出しがあるのはショックで、特に外部チューナーを使った場合は影響が強く出ます。内蔵チューナーでも色のはみ出しが皆無というわけではありません。ディジタルだから色のはみ出しの処理も完璧だと思っていたのですが…。音声についてですが、HR-W5内蔵チューナーが採用しているインターキャリア方式の弱点が露呈する場合がある以外は、DVもW-VHS(SD)も音質的には大差がありませんでした。むしろ下手にDVで外部チューナーを使うよりはW5内蔵チューナーの方が音が良い事がありました。またDVとW-VHS(SD)の微小レベルでの再現性もヘッドホンでシビアにチェックした場合の話で、スピーカーではまず判別出来ないと思います。Hi-Fi音声のスイッチングノイズは少なく抑えられている事からもW5の音質は間違いなくアナログ記録の最高レベルであると私は思います。

WV-D9000は廉価なDVデッキで、比較的手軽に購入出来ます。が、DV再生時の画質調整がほとんど出来ない事を考えると、録画性能は確かに高いけれども再生性能はそれほどでもないと考える事も出来ます。やはり所詮は廉価デッキ、D9000では玄人好みの絵は出ません。記録性能と再生性能は別の話で、録画される情報量はD9000の方が多いとは思いますが、再生される絵はW5の方がより深みのある絵が出ます。今後もDVデッキはD9000よりも更に安くなってW5のデッキ価格での優位性は薄れてしまうと思いますが、再生性能の問題(D9000より安いデッキでD9000以上の絵が出るとは考えにくい)やテープのコストパフォーマンス(W-VHS(SD)はDVの2分の1のコストで済む)を考えると、HR-W5の購入は「考慮しても良い一つの選択肢」であると私は思います。少なくとも、W5の絵はこれでなかなか味わいがあるという事を実感しました。画質全体の品位では、私はあえてHR-W5側に軍配を上げたいと思います。チューナーの差を描き出せるだけの性能は持っているからDVのフォーマットとしての記録性能は高いとも言えるのですが、DHR-1000内蔵チューナーの性能が良くないので輪郭強調が目立ち、しかもD9000単体ではその補正が出来ず、更にD9000のDV再生で全体に白っぽく浮いてしまう傾向にあるのが減点対象になりました。W5でSD YNRをONにすれば、色が全体に薄く色相が回る以外はD9000とほぼ互角の絵が出ます。絵に深みがあり、輪郭を細くすっきり見せるのは、むしろW5です。私は、今後もW-VHS(SD)を保存用に使い続けます。エアチェック機として内蔵チューナーを含めて考えた場合、むしろW5が総合力では上であるという判断を下したからです。D9000は、短時間番組の録画や繰り返し録画に回るでしょう。
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(pooh)

いつもいつも詳細なレポートありがとうございます(誰もおまえのためにやってるんじゃないと言われそうですが) デンデルモンテさんの掲示板で今MD関連の議論が白熱しているのですが(議論にはなっていないように思いますが)、人の"楽しみ方"というのは色々だぁとつくづく思います 99/03/08 13:39:00
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(ひろみっく)

D9000ではY/Cディレイの調整ができないのでしょうか?色はみだしの件では。それから、あいさんの書かれていることからするとW5をチューナーにしてD9000で記録する、という使い方が適している場合もありそうに思えたのですが。まあ、私はDHR−1000というかソニーのチューナーにそもそもこだわっていませんし、もう1つはD9000はプレステージ機では結局ないわけなので、やはり不利といえば不利ですね。短時間録画や繰り返し録画のような使いまわし用途にはDVは非常にいいです。いつでも保存目的に変更できますから。まあ、さらに問題なのは現行では確かにDHR−1000は最上位機種なんですが、設計も古いし物量投入もしているといえる程にたとえば匡体が重たくはないですし、あの値段からすると不満たらたらであるのも確かなんですよね。あの定価であればキロ1万として 40キロくらいはないといけない、とまでは言いませんがまあ20キロはあるべきだと思いますし。アナログ部分での追い込みがあった上でのデジタルの取り組みであってほしいと思います。DHR-1000はせいぜい 10キロくらいでして、非常に軽くて安っぽい感じがしたのが実は第一印象でした。そういえば。 99/03/08 16:09:56
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(6no.)

昔にも書きましたけど、私もDHR-1000の12bitのAモードディジタル音声よりW5(W-VHS/SDモード)のHiFi音声の方が良いと感じます。CDの音を録音再生した場合の感想です。管弦楽はまだ良いのですが、マーチ等ではどうにも…。WOWOWの音楽ソースでも同様の感じですので、12bitの圧縮はハイパワーの低域と高域の表現に多少無理があるようです。1KHz正弦波のみのスペックだけて優れていますのはMP3でも一緒ですからね。実際に複雑な波形を入れますと色々ボロが出るといったところでしょうか。 99/03/08 17:57:56
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(ZZ)

余計ですが,私の経験をかかせてもらいますと,ソニーの廉めのデッキ内蔵チューナーではシュートが目立つ印象でした。輪郭補正そのものにくせがありそうですね,ソニーの場合。しかし,W5はさすがといったところですね。 99/03/08 18:46:13
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(あい)

D9000にY/Cディレイの調整は、出来ません。それどころか、シャープネスの調整さえありません。ここが、廉価デッキ扱いされる理由かな、と思いました。せめてシャープネスの調整は欲しかったですね。そうですね、結局はHR-W5の内蔵チューナーを使え、という事かも知れません。DHR-1000は40万円近くしますが、ビデオでそこまでするのもどうかと思ったので、今回は見送りました。いかにプレステージ機と言えども設計も古いし…。なにしろWV-D9000ならほぼ同性能のDVデッキ部が付いて半額の出費で済みますから、この差は大きいですね…。まぁ、色々と書いてしまいましたが、結局私が言いたいのは「とにかくDV至上主義」に対して、反対意見を述べたかったのです。確かにチューナーの差さえ描き出してしまう、DVのデッキとしての性能に文句はないのですが、内蔵されているチューナーの性能が悪く、デッキ部の足を引っ張っているとしか思えず、この程度の画質ならまだW5で録画した方がエアチェック画質が良いのではないか、という事です。W-VHS(SD)もまだまだ捨てたものじゃないんだよ、と言いたかったわけです。 99/03/08 23:36:17
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(デンデルモンテ)

D9000では何もできそうにないですものね。設定。ビデサロによるとパナの NVDV10000はその設定を極めるとDHR1000を超えるそうですが。金はある、そのまま使う、カメラ派のおじさんみたいな方ならDHR1000、あいさんくらいの設定を極められるマニアならDV10000がいいのかもしれませんね。DV10000もSB900より貧弱なチューナーならそのままでは使えませんが。しかしDVも各社チューナーが弱くては意味がないと思うのですが。たとえばSB900チューナー原画よりV700でとったテープをSB900で再生した方がどうみても綺麗なので、この論理で行くと、DVデッキは場合によっては優れたチューナー+SB900にさえ負ける恐れさえあります(^^;意地悪く考えるとDVデッキは「故意に」チューナーを悪くして完璧なエアチェックを妨げているとか(爆)。外部チューナー必須なら業務用VCRと変わらないのですが(^^; やはりビクターにX7の後継(?)GRT付きDV又はDVHSデッキ、あとは三菱にV6000の後継DVデッキを期待するしかないか(笑)。「フローティングメカのDVデッキ」??(笑) 99/03/09 02:27:46


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